セルフで給油が始まらないのは、店員さんの「給油許可」待ちだった

セルフで給油が始まらないのは、店員さんの「給油許可」待ちだった

給油の設定を全部終えて、給油ノズルを差し込んで、給油レバーを引く。なのに、ガソリンが出てこねぇ。セルフのガソリンスタンドで、給油が始まらないことがよくある。ぼくはそのたびに、レバーをカチカチ引きながら「あれ?」と固まっていた。

配達でバイクに乗る日は、毎日1回、セルフで給油する。1日1回で足りなくなることはないけど、そのぶん、この「あれ?」も毎日やってくる。手がかりは、店員さんがいる部屋に書いてある「監視室」の文字と、「毎回ちがう待ち時間」だった。

設定を終えて給油レバーを引いても、始まらない

画面で設定を全部済ませて、ノズルを差して、レバーを引く。毎日やっている手順だ。最初は、自分が何かやらかしたのかと思った。画面の表示を見返したことも、何回かある。

手順が終わっていなかったことも、たまにはあった。でも、ほとんどはちゃんと全部終わっている。やることは全部やった。それでも出ない。

ここでぼくにできるのは、給油レバーをカチカチ引くことくらいだ。カチカチ、カチカチ。そのうち出る。連打したから早く出た、という気はまったくしない。

「監視室」の文字と、バラバラな待ち時間

気になったのは、店員さんがいる部屋に書いてある文字だった。「監視室」の三文字。なにを見ているんだろう?と考えると、謎の半分は解けていた。ガソリンは危ないものだから、安全のために、店員さんが何かを押してから始まるのかもしれない。

もう半分は、待ち時間。すぐ始まるときもあれば、10秒以上待たされる気がするときもある。こっちは毎回、同じことをしているのに。機械のランダムにしては、気まぐれすぎた。

機械が何かを判定しているなら、同じ操作には、だいたい同じ時間で答えが返ってきそうなものだ。何かの条件で止まっているにしては、規則性が見えない。どちらかというと、店員さんが気づいてから、何かのスタートボタンを押しているような感じがする。

給油が始まらない理由の手がかり

そう考えると、気になってくることがある。イライラしているわけではないけど、カチカチは何回も引いていた。その1回1回が、店員さんに何かのシグナルとして届いていたら・・・と思うと、ちょっと恥ずかしい。

調べてみたら、店員さんが「給油許可」を押していた

調べてみたら、推理は当たっていた。セルフのスタンドでは、客がノズルを給油口に差し込んだあと、店員さんがサービスルームの「制御卓」で「給油許可」のボタンを押す。そこではじめて、ガソリンが出る。消防法で決まっているセルフのルールらしい。

セルフなのに、ぼくの給油は店員さんの返事待ちだった。許可が出るまで、給油機はロックされていて、レバーを引いても出ない。そのあいだに店員さんは、目で見たりカメラで見たりして、油の種類の間違い、ポリタンクのような容器への給油、子どもにノズルを持たせていないか、火の気がないか、ノズルがちゃんと差し込まれているか、などを確かめている。「監視室」は、本当に監視していた。おれなんかの安全のために、ありがとう店員さん。給油ははずむぜ。50ccだからすげぇ量少ないけど。

セルフで給油が始まるまでの流れ

火がつきやすいガソリンを、客が自分で入れる。そのかわりに、店員さんが見て、確かめてから出す。セルフは、そういう二人がかりの仕組みだったらしい。おれは知らん店員さんとはじめての共同作業を何度もしていたんだな。顔くらい知りたい。

なので、給油が始まるまでの時間がバラバラになる。店員さんが気づくまでの時間も、確かめる時間も、毎回同じじゃない。待ち時間のバラバラは、人が気づくタイミングのバラバラだった。店員さん、俺は安全か?火ぃついたり、しないか?

レバーを引いても出ないとき、たいていは、機械が壊れているわけでも、こっちがミスをしたわけでもない。店員さんが確かめているあいだの時間だ。

セルフで給油が始まらない理由

やっぱりそうか。推理が当たって、ちょっとうれしかった。ただ、許可の前のカチカチの回数までもが店員さんに届いていたのかどうかまでは、いまでもわからない。

店員さんがトイレに行ったら?

推理していたころから、もうひとつ気になっていたことがある。もし店員さんが1人で、トイレに行っていたら? そのあいだ、ぼくはノズルを持ったまま、ずっと待たされるんだろうか。

調べてみたら、深夜でも、サービスルームには必ず1人いないといけない決まりらしい。誰もいない時間は、作れない。ってことは、ワンオペはないのかな? それならホワイト企業ヤン。

ひとつ確かなのは、許可を押す人がいなければ、給油は始まらないということ。レバーをいくら引いても無駄。

ちなみに、2026年の5月ごろには、カメラの映像をAIが見て、問題がなければ自動で給油許可を出す仕組みも出てきたらしい。AIなら、トイレには行かない。そういう店なら、待ち時間も変わってくるのかもしれない。

今は「ゴーッ」が鳴るのを待っている

カチカチやりながら通っているうちに、もうひとつ気づいたことがある。給油が始まるとき、機械から「ゴーッ」という音がする。これが合図。鳴ったら、もう出る。これがほんとのゴーサイン。

給油許可のことを知ってからは、連打しないで待とう、と思った。今はカチカチもしない。ノズルを差して、「ゴーッ」と言い出すのを待つだけだ。壊れていたのは機械じゃなくて、ぼくの気の長さだった。

給油を待つときの前と今

セルフの最後のスイッチは、店員さんの指だった。仕事の日は、毎日そのスイッチのお世話になっている。今日もぼくは、監視室に見守られて給油している。