休みの日にパソコンでXを眺めていたら、海外のちいかわファンのポストが自動翻訳で流れてきた。最近、僕のおすすめには世界中のちいかわファンが流れてくる。
その中に、シーサーをこう呼んでいる人がいた。赤ちゃん豚ライオン。
エッ。怒りじゃなくて、エッ。
ブタなのに、本気でかわいがっている
悪口じゃないのは、すぐ分かった。書いているのは、僕なんかよりずっとちいかわが好きなファンで、本気でかわいいと思っているのが伝わってくる。
それでも、ブタ。ファンの愛情は伝わるのに、「豚」の一文字だけが僕の辞書に無かった。
シーサーは頑張り屋で、努力家だ。ブタではない。確かにミニブタはかわいいけど。
そのあと、日本のXのトレンドに「豚ライオン」が入っているのも見た。

引っかかったのは、僕だけじゃなかったらしい。
調べてみたら、ブタは愛称だった
韓国語でブタは「돼지(テジ)」。調べてみたら、恋人や友だちを「テジ」と呼ぶのは親しみの表現だと、向こうの新聞のコラムにまで書いてあった。

ぽっちゃりしていて、よく食べて、かわいい。そのくらいの温度らしい。
言われてみれば、ミニブタはかわいい。テジ、という音の感じも確かにかわいい。
ちいかわのうさぎには、向こうのファンがつけた「돼끼(テッキ)」というあだ名がある。ブタ(돼지)とうさぎ(토끼)をくっつけた、ブタうさぎ。
食いしん坊だから、これはすぐ納得した。

向こうでは、ブタは呼び名の材料になっている。
ブタは悪口。そう決めていたのは、韓国語じゃなくて僕の日本語だった。
ただし「赤ちゃん豚ライオン」が向こうのファン全体の呼び方なのかは、分からなかった。確かなのは、あのバズったポストの人が、自動翻訳でそう呼んでいたことだけ。
それと、彼女をテジと呼ぶ人もいるけど、嫌がる人も多いらしい。場合によっては地雷。
彼女をブタと呼ぶ人がいる国と、彼女をブタと呼んだら終わる国。
うんこ子犬まで出てきた
調べているうちに、ブタどころじゃない言葉が出てきた。「똥강아지(トンガンアジ)」。
똥がうんこ、강아지が子犬。うんこ子犬。
辞書を引いたら、本当にあった。幼い子どもや孫を、愛情を込めてかわいく呼ぶ言葉。おじいちゃんおばあちゃんが孫に言う、定番らしい。

背景には昔の風習があるそうだ。生まれたばかりの子の福を守るために、わざと「개똥이(犬のうんこ)」のような卑しい幼名をつけた。
日本にもあった。豊臣秀頼の幼名は「拾丸(ひろいまる)」。子どもが丈夫に育つという民間の習わしにならって、家臣がわざわざ「拾う」役をやったという。

卑しい名前が、そのまま守りになっていた。
けなし言葉が愛情になる回路は、こっちにも昔からあった。けなすのに使う言葉が、違うだけなのかもしれない。
うんこ子犬まで出てきたところで、豚ライオンが急にマイルドになった。
理解はできた。腑には落ちない
日本語でブタと人間を掛け合わせたときの印象は、千と千尋の神隠しの、お父さんとお母さんが料理をむさぼってブタになっていく場面に象徴されていると思う。
あの場面がイメージを作ったというより、もともとあった「ブタ」のイメージが、あそこに描かれている。
僕の「ブタ」は、あの場面に全部入っている。
一方で、日本語も「豚」の字を動物の名前に使っている。河豚はフグで、腹を膨らませる姿がブタに似ているから。海豚はイルカで、ブタに似ていると思われていたから。

ブタは、日本語でもそこまで悪者じゃなかった。日本語の「ブサかわ」だって、外から見たら同じだろう。
意味は通じている。使う言葉が違うだけ。

分かったのは、ここまで。
妻と2人のときに、ふざけて使ってみた。ブタでもライオンでも通じる。ただ、外で使うのは危うそうだ。
僕が「豚ライオン」と言うと、たぶん微妙。向こうのファンが言うから、かわいい。
不思議な感じだけど、嫌な感じではなくて、びっくりして、そして笑った。
理解はできた。腑には落ちない。しかし、それでいいのかもしれない。

